医薬品・治験薬の受託製造を専門に手掛け、世界56カ国のグローバル市場に製品を届けている武州製薬。
同社では会津工場の合併による業容の拡大を機に、会計、販売管理、調達、生産管理などの基幹業務システムをSAPのERP「SAP S/4HANA」で一本化し、業務プロセスの変革・標準化を実現した。そこには様々な挑みと努力、成功に向けた創意工夫があった。
事例紹介動画
武州製薬 CIO小川 勝氏が語る、武州製薬にとってのSAP S/4HANA導入の意義と効果
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導入前の課題
- 工場合併による業容拡大に対応すべく基幹業務の標準化・効率化が急務
- 会計・財務コンプライアンスの強化
- 経営PDCAサイクルのスピードアップ
導入後の効果
- 基幹業務の共通化・標準化の実現とITプラットフォームの確立
- 業務電子化とプロセスの見える化による法規制対応と内部統制の強化の実現
- 実績データのリアルタイム収集・集計が可能となり、経営PDCA 高速化を実現
導入のポイント
- トップダウンの意思決定のもと、関係各部の精鋭が専任で「SAPS/4HANA」導入に取り組む体制を組織として整えた。
- 技術部門のエンジニアを中心に関係各部の担当者を巻き込む体制のもと、マスタの整備と各工場間での品目コード体系・ロット体系の統一に徹底して取り組んだ。
- SAP S/4HANAの標準機能・プロセスに自社の業務を合わせるという「Fit to Standard」の方式を取り入れ、カスタムモジュールの開発を必要最小限に抑えた。
導入製品・ソリューション
医薬品製造業向けSAP S/4HANAテンプレート「B-EN-Gp」
プロジェクトスコープ
同社では、SAP S/4HANAの「財務管理(FI)」「管理会計(CO)」「販売管理(SD)」「在庫購買管理(MM)」「生産計画・生産管理(PP)」「品質管理(QM)」といったモジュールを導入。各工場の製造実行システム(MES)やラボ情報管理システム(LIMS)などと連携させながら、システムの共通化と業務の標準化を実現している。
導入の背景
工場の増強を機に「SAP S/4HANA」の全社導入をトップダウンで決定
SAP S/4HANA導入の経緯について、導入プロジェクトを牽引したリーダーの1人である武州製薬 生産本部直轄 担当部長の福田 明芳氏はこう説明する。

「SAP S/4HANA導入のきっかけは、当社に会津工場が加わり、3工場体制になったことです。この業容拡大の経営効果を最大限に高めるべく、それまで工場ごとに異なっていた基幹業務システムと業務プロセスをSAP S/4HANAによって共通化・標準化し、経営リソースの全体最適を図ることになりました。この変革は、当社の経営トップ(代表取締役社長 兼 CEO の髙野 忠雄氏)の強い意向のもとで決定されたものです。決定の背景には、世界の製薬業界で広く使われているSAP製品の活用を通じて、グローバル市場での当社の価値と信頼性をともに高めるという狙いがあったといえます」
SAP S/4HANA導入プロジェクトのもう1人のリーダーである武州製薬 経理財務部 部長の長谷川 正夫氏は、導入の背景について次のような説明を加える。

「経理財務部では、SAP S/4HANAを導入する以前から、SAPのERP製品を使っていましたが、それはあくまでも決算のためのツールに過ぎず、標準原価計算にも使っていませんでした。また、販売管理や調達、生産計画・生産管理のシステムとも連携されていなかったので、それらのシステムから速やかに情報が収集できず、実績をリアルタイムに把握したり、予算策定や見通し策定のスピードと精度を上げるのも困難でした。加えて、各部門から提出された紙の情報をシステムに転記するオペレーションも多く、インボイス制度や電子帳簿保存法といった各種の法規制・コンプライアンスの要件に柔軟に対応するのも難しかったといえます。その辺りの問題を一挙に解決する目的も、SAP S/4HANAの全社導入にはありました」
プロジェクトの目標
掲げた大目標と実現に向けた施策
武州製薬がSAP S/4HANAの全社導入に際し掲げた経営上の大目標は会計、販売、物流、生産のリソース最適化とIT整備を軸に、次の4つに集約される。
- 業容拡大への対応(業務スピードと品質の向上)
- 経営PDCAサイクルの実現(予算策定と見通し精度の向上/決算早期化と迅速なアクション)
- 法規制対応・コンプライアンス対応・ガバナンス強化(消費税・インボイス制度への対応/電子帳簿保存法への対応/内部統制の強化)
- 業務の効率化(統合システムの実現による各業務の標準化・効率化)

これら全ての施策を展開する上で同社が特に力を注いだのは、マスタの整備と各工場間での品目コード体系・ロット番号体系の統一であった。
プロジェクト成功の要因
下記の1から4までの課題に柔軟に、迅速に対応していった。
- マスタ整備
技術者主体の体制変更と連日の定例会で解決 - 品目コードやロット番号体系の統一
統一化を絶対に実現するという判断のもとの「強い意志」 - 標準原価の精度向上
導入プロジェクトを通じて、メンバーのマスタメンテナンスの技術が向上、製造と原価との紐づけへの理解も深まる - 現場の業務の変更
- プロジェクトがトップダウンのため、業務変更への現場抵抗は比較的小さかった
- プロジェクトのレポートラインが経営側の相談役であり意思決定がスピーディ
- 過負荷のかかるタイミングで朝会や夕会を実施
上記に加え、B-EN-Gの、豊富な知識から来る具体的な提案、プロジェクトのあらゆる段階での円滑でスピーディーなやり取り、SAP S/4HANAへのデータ移行など難しい作業を成し遂げるまで粘り強く支援した姿勢はメンバーの励みとなった。
プロジェクトの成果
- ペーパーレス化と原価管理の精度向上
- 拠点間のスピーディーな情報共有を実現
- 調達計画の最適化とデータ活用
武州製薬代表 髙野 忠雄 氏のコメント
「この度のSAP S/4HANA導入は、製造から販売、財務までのデータを一元管理し、業務スピードと正確性の向上を図り、お客様からさらなる信頼を獲得する目的があります。 実際、システム導入を通して、業務そのものが再定義され、部門間の情報連携強化により様々な変化が起きています。お客様のご要望に応え続けるためにも、SAP S/4HANAをうまく使いこなし、『武州製薬にこそ頼みたい』と言われたいですね。」
事例企業紹介
社名 | 武州製薬株式会社 |
設立 | 1998年8月3日 |
本社・川越工場所在地 | 埼玉県川越市竹野 |
事業内容 | 医薬品・治験薬の受託製造 |
主要事業拠点 | 川越工場、美里工場、会津工場、加須パッケージングセンター、草加パッケージセンター |
企業Webサイト | https://www.bushu-pharma.com/ |
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