事例

DIC株式会社様

より高度な業績管理と効率化の両立を実現 グローバル連結業績管理基盤構築事例

DIC株式会社様

課題

  • 広範な事業、拠点を横断したグローバル連結業績管理基盤の充実が急務
  • Excelベースの手作業に依存していた集計作業の効率化、プロセスの自動化
  • より高度なデータ活用、データ経営の実現に向けた情報基盤の整備導入

導入製品・ソリューション

SAP BPC、予算管理・連結経営管理ソリューション「B-EN-Ggpm」

プロジェクトの背景

DIC株式会社(以下、DIC)では100年以上の歴史を通じてインキの基礎素材である有機顔料や合成樹脂をベースに、自動車、家電、食品、住宅などのさまざまな分野に事業を拡大。現在は印刷インキ、有機顔料、PPSコンパウンドで世界トップシェアを誇り、世界64の国と地域に174のグループ会社を通じてビジネスを展開するグローバル化学メーカーである。

 

2012年以降、グローバルの各拠点にSAP ERPを段階的に導入し、グループ経営の基盤として活用しているが、拡大を続けるグローバルビジネスにおける連結業績管理をいかに強化していくかは、継続課題の1つだった。SAP BPC (Business Planning and Consolidation)の導入を決定した背景には、グローバルの拠点を横断して会計データを統合管理し、より精度の高い意思決定を下すための基盤を構築するという狙いがあった。

プロジェクトで掲げられた目標には大きく次の3つがあったという。まず、それまでExcelを使って手作業で行っていた会計データの集計作業を自動化し、データの発生から処理・活用までのプロセスを効率化すること。次に、会計項目をより具体的な製品レベルにまで細分化し、業務の実態を正確に把握するための基盤を構築すること。そして最後が、グローバルビジネスで不可欠な高度なデータ活用、およびデータドリブンな戦略立案といった未来の成長に向けた布石を打つことだった。煩雑かつ非効率なプロセスを自動化し、各グループ会社が個別に管理していたデータベースを本社に統合することができれば、国内外のグループ会社が実績・予算データを共有できるグローバル・ワンインスタンスのデータベースが出来上がり、連結経営は強化される。これこそが、SAP BPC を導入する最大の目的だった。

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検討・導入メンバー 左から
経理部長 金子 潤氏
経営企画部 マネジャー 中村 圭佑氏
情報システム部 サービス&ディベロップメントグループ マネジャー 中西 功介氏

導入プロジェクトの概要

同社では、2006年に会計のレポーティングツールとしてSAP BOFC(SAP BusinessObjects Financial Consolidation)を導入したが、この環境では「製品本部」という枠組みでしか業務の実態を可視化できないことが課題となっていた。今回のプロジェクトでは、もう一段細分化された「製品グループ」単位で把握できるように、SAP BPC用にB-EN-Gが開発したテンプレート「B-EN-Ggpm」(Global Performance Management: 予算管理、連結業績管理の豊富な機能をサポート)を活用して、プロジェクトの重要な要件である「製品グループ」単位の項目設定を可能とした。

導入の効果

Excelシートを本社で集計して、SAP ERPに登録する二重の手間は新システムですべて解消され、大幅な時間短縮が実現した。また、システム運用の面においても、「B-EN-Ggpm」の活用によって省力化や効率化といった効果がもたらされている。たとえば、テンプレートを利用することでカスタマイズの作業は最小限に抑制され、開発・運用の効率は大きく向上している。これを自社でゼロから開発するとしたら、相当な労力と工数が発生していたに違いない。同社の情報システム部門には、現在もSAP BPCに関する新たな知見や技術的なスキル、ドキュメントが次々と蓄積されている。これらは今後のグローバルビジネスを支えるIT運用において、いずれも大きな意味を持つものばかりだ。

  • 集計作業をSAP BPC上に集約して自動化し、作業時間の短縮を実現
  • より細分化された業績管理軸による各製品事業の可視化、改善課題の特定
  • 単なるデータの集計・管理から、高度な分析およびデータ経営の基盤としてのシステムの進化

今後の展望

SAP BPC による新たな連結業績管理基盤によって、グローバルビジネスのさらなる拡大に向けた課題の一つをクリアすることに成功したDICでは、自社内においても明らかな変化の手応えを感じている。より細分化された業績管理軸=個々の製品事業のグループ合計・各社毎の実態が数値で把握できるようになったことで、現場のモチベーションや意識は高まりつつある。それらをベースに会話や議論を重ねることで、今後はさまざまな課題が解決できると期待している。

現時点では、予算・推定の集計機能を実現した段階だが、DICではより戦略的なデータ活用に向けて、SAP BPC の応用範囲を拡大していきたいと考えている。これまでは確定した売上高と営業利益をまとめ、グループ全体での合計や予実の比較を行うにとどまっていたものを、分析の強化を通じてよりデータドリブンな経営につなげ、最終的にはグローバルのすべての事業を統合した上で、その収支構造を分析する仕組みを作り上げたいとしている。

※記事内における組織名、役職、数値データなどは取材時のものです。閲覧される時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。