プロフェッショナルに聞く

製造現場が本当に実現したいことは何か
DELMIA Aprisoで導く全体最適のMES基盤

2026.08.18

B-EN-Gの人 プロジェクト

話者:ビジネスエンジニアリング株式会社
ソリューション事業本部
デジタルサプライチェーン本部 SCMソリューション1部
コンサルタント
奈良 裕(なら ゆたか)

奈良裕は、グローバルスタンダードなMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)パッケージ「DELMIA Apriso」に10年以上携わり、開発・設計から要件定義、導入支援まで幅広い経験を積み重ねてきた。標準機能と企業固有の業務価値を見極めながら、現場が本当に実現したいことを顧客とともに掘り下げ、全体最適のMES基盤へと導いていく。その根底にあるのは、当たり前のことを徹底し、現場に“泥臭く”寄り添い続ける姿勢だった。

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地道な探究心が育てた
MES領域の確かな専門性

製造現場のデジタル化は、単なる効率化の域を超え、企業競争力そのものを左右する時代となっている。そこで中核的な役割を担うのがMESだ。生産工程における作業者への指示をはじめ、進捗・実績・品質・トレーサビリティに関する情報の総合的な管理を担い、ERPやPLM(製品ライフサイクル管理)、設備制御などの周辺システムとも連携しながら、生産性の向上やトラブルの早期発見を支援する。

この製造DXを見据えたソリューションをリードする存在として、ダッソー・システムズのグローバルMESパッケージ「DELMIA Apriso」を中心に、10年以上にわたる経験を積み重ねてきたのが奈良裕である。

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もっとも、奈良は当初からITや製造の分野に精通していたわけではない。「大学では生物科学を専攻し、海藻からDNAを抽出し、進化の過程を読み解くという研究に取り組んできました。また、就職活動に際しても最初からIT業界を志していたわけではなく、システムに関してはまったくの素人でした」と奈良は語る。

しかし、データを集め、根拠を積み重ねながら、正しい論理を組み立て、真実に近づいていく――その地道な姿勢が、MESの世界で活かされたのだ。

2014年に入社し、配属後すぐにMESプロジェクトの現場に入った奈良は、DELMIA Aprisoの開発・テストから始まり、基本設計、導入支援、そして上流フェーズの要件定義へとステップアップを図りながら、自らの幅を広げてきた。「長い下積みを重ねてきました」と奈良自身が振り返るこの時間こそが、多くのプロジェクトで顧客から厚い信頼を得る、「MES領域では誰にも負けない」という彼の気概の源泉となっている。

「何でもできる」からこそ
全体最適への判断力が問われる

DELMIA Aprisoは、MESの概念を拡大したMOM(Manufacturing Operations Management:製造オペレーション管理)ソリューションとして、製造実績管理はもとより品質管理、在庫管理、保守管理、従業員管理など、幅広い領域を単一プラットフォームでカバーするのが特徴だ。

B-EN-Gは2005年からDELMIA Aprisoビジネスを開始し、プライムとして日本で初めて導入を成功させたパートナーとして知られる。そのB-EN-Gの中でもDELMIA Aprisoと深く向き合ってきた奈良は、このソリューションをさまざまな製造業の現場に展開するにあたり、どのような点に留意しているのだろうか。

「DELMIA Aprisoのメリットは、グローバル標準モデルを備えながら、お客様ごとの業務プロセスに合わせて柔軟に構成できる点にあります。スクラッチ開発の自由度と、パッケージの利便性を兼ね備えているのです。ただし、その柔軟性は扱い方を一歩誤れば、標準からかけ離れた複雑な仕組みを生み出しかねません」と語る奈良は、「だからこそ『何でもできる』ことよりも、『何をやるべきか』を判断することが重要です」と強調する。

実際、顧客からは日々多くの要望が寄せられる。中には製造現場からの切実な改善要求もあるが、すべてをそのままシステム化すれば、コストや運用負荷が膨らみ、かえって使いづらい仕組みになってしまいかねない。

そこで奈良は、DELMIA Aprisoの標準機能やグローバルで培われたベストプラクティスを踏まえた上で、「本当に実現したいことは何か」を常に顧客に問い直している。それを通して標準に寄せるべき領域と、顧客固有の強みとしてあえて残すべき領域を見極めるのだ。

このギリギリの判断を支えているものこそ、先にも述べた長年にわたる開発・テストや設計に関する経験に他ならない。

「パッケージの細部を知らなければ、上流フェーズで描いた構想が実装可能かどうかを見極められません。また、設計を理解していなければ、お客様に対して納得感のある改善策を提案することもできません」と語る奈良は、下流フェーズから積み上げてきた経験をよりどころに、MESを全体最適の視点に基づくあるべき姿へ導いている。

現場ごとの課題を見極め
標準と独自性をつなぐ

そんな奈良がこれまで携わってきたプロジェクトは、精密機器、輸送用機器、電気機器、原動機、発電設備、航空機、電子部品など多岐にわたる。まさに日本のものづくりの根幹を支えている、ディスクリート(組立系)製造業の現場の数々だ。

ある電子部品メーカーのプロジェクトでは、国内のマザー工場で先行的に実証された自動化ラインの考え方を海外工場に展開し、安定した品質で大規模生産を行うためのMES基盤づくりに取り組んだ。

「急務となったのは、安定生産・安定品質を維持する仕組みの構築です。現場の知恵やノウハウを形式知化することで作業者ごとのばらつきを抑え、データに基づいた継続的な改善活動を実現するものです。MESを含めた生産管理システムの共通化・統合によるグローバル展開を図るとともに、拠点間に横串を刺したデータ活用を推進し、リソース活用の最大化を目指しました」(奈良)

この課題に対して奈良が提案したのは、DELMIA Aprisoの標準仕様に可能な限り準拠することで開発効率を高め、全社展開を加速するという基本方針である。部分最適で作られていたシステムを、設備から製造管理、基幹システムまでシームレスにつながる全体最適化された形に刷新。結果として、5M(Man・Machine・Material・Method・Measurement)のデータ化と製造履歴の可視化を実現した。

「誰が、どの設備で、どの条件で、どの製品を加工したのか。属人的な判断に頼らず、分析可能な形でデータを残すことで、新工場の立ち上げ時だけでなく、将来の生産拡大や品質改善にも耐えられる基盤を整えました」(奈良)

また、独自の厳格な規制や複雑な受注生産プロセスを持つ原動機製造業のプロジェクトでは、ベースシステムだけでは対応しきれない課題に直面した。

そこで奈良が提示したのは、DELMIA Aprisoが持っているA&D(航空宇宙・防衛)業界向けのベストプラクティスをベースに、「世界標準に沿った機能分担を図る」という方針である。標準機能で対応すべき領域と、パッケージに無理のない独自ロジックで対応すべき領域を明確に分離し、上流の設計変更と現場のオペレーションに無理が生じない機能を設計・提案した。

「上流フェーズで修正すべきデータと、現場で微修正したいという要望の折り合いをつけながら、パッケージに無理のない独自ロジックとして設計・提案しました。また、セキュリティ上の制約からメールが使えない製造現場について、担当者から次の担当者へ作業をスムーズに引き渡すための代替手段を設けました」(奈良)

当初は顧客側での判断が進みにくい局面もあったが、奈良が実質的なITリードとしてプロジェクトを積極的にけん引することで、MES展開における高度なQCD(Quality・Cost・Delivery)を実現した。

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「凡事徹底」で顧客と向き合い
製造DXの先へと導く

2つの事例に共通する成功要因は、単にDELMIA Aprisoを導入したことではない。

顧客が本当に実現したいと望んでいた、「海外拠点でも安定品質を保つ」「将来のデータ分析・活用に耐える履歴を残す」「複雑な設計変更や工程進行を製造現場に無理なく反映させる」といった潜在的な業務課題まで掘り下げて要件を明確化。その上で、DELMIA Aprisoの標準機能で吸収すべき部分と、顧客固有の競争力として拡張すべき部分を丁寧に切り分けていった点にこそ、成功の要因がある。

本来は顧客側で判断すべき業務課題であったとしても、「それはお客様の仕事です」と突き放すのではなく、背景を聞き、悩みを共有し、一緒に考える。また、答えを代行するのではなく、顧客自身が判断できるように論点を整理する。

「こうしたB-EN-Gらしい“泥臭い”関わり方が、まだ仕様が固まっていない段階でも、私たちに率直に相談していただける関係性を生み、手戻りの少ないプロジェクト運営にもつながっています。その結果、業務標準化や品質トレーサビリティの確立など、将来の改善活動につながるMES基盤をお客様に提供することができました」(奈良)

確かな実績を重ねてきた奈良は、今後に向けてプロジェクトリーダーとしての視野をさらに広げ、顧客との折衝やプロジェクト全体のマネジメントを担っていく役割へと歩みを進めようとしている。もちろん、より上位の役職に立ったとしても、現場に寄り添う存在であり続けるという思いは変わらない。

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「私のセオリーは『凡事徹底』です。当たり前のことを妥協せず徹底的に行うことをスタートラインとし、その上で、設計開発の標準化や品質維持、仕様調整など、現場の状況に応じたプラスアルファの打ち手を積み重ねていきます。また、プロジェクト遂行で最も大切にしているのは、チームメンバーに気持ちよく働いてもらうことです。リーダーだからと偉ぶることなく、相手をリスペクトし、全員のモチベーションを高めることで、結果としてプロジェクトの品質と推進力を最大化できると確信しています」(奈良)
現場が抱える本質的な課題と向き合い、顧客とともに最適解を積み上げていく奈良の姿勢は、これからの製造DXの確かな推進力となり、日本のものづくりを支えていく。



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