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グローバルビジネスを「標準化する」NRIがASEANの日系企業のシステム化をmcframeで支援

2019.02.14

#シンガポール

競争が激化するアジア市場で、日本企業のビジネスを加速する。求められているのは、ものづくりを支援する業務システムの「標準化」だ。大手システムインテグレーターの野村総合研究所(NRI)が海外進出日系企業向けに、 ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の製造業向け生産&原価管理システム「mcframe」の導入を進めている。シンガポールを拠点にグローバルビジネスをサポートする両社のキーパーソンが対談し、システムの標準化によるビジネスの効率化の重要さを語った。

NRIシンガポール・ステラ氏の挑戦

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NRIのシンガポール子会社、Nomura Research Institute Singapore Pte. Ltd.(NRIシンガポール)。金融業界や製造、小売、流通など幅広い顧客企業を対象にITソリューションなどのサービスを提供している。ここNRIシンガポールでグローバル・サプライチェーン・マネジメント チームに所属するのが、中国出身のステラ・ティエン(田鳳慧)さん。中国語はもちろんだが、英語と日本語もネイティブ並みに堪能な才女だ。

中国の大学を卒業後、大手外資ベンダーのERP導入支援を外資系や日系企業向けに行う仕事に就き、2015年にNRIシンガポールに転職。NRIがパートナーとして提携するB-EN-Gの「mcframe」の導入コンサルタントとしても活躍している。日本企業文化を良く理解し、海外とのコミュニケーションに長けたステラさんだからこその適任だろう。

「日本の企業は男性が多いが、タイやフィリピンなどの日本企業ではローカルスタッフは女性が9割近くを占めたりする。オフィスの雰囲気がガラリと変わっておもしろい」とステラさんは笑顔で話す。「東南アジアではポジティブな意見もネガティブな意見も忌憚なくその場で話すことが多く、意思決定も早い。品質はまだまだ発展途上だが、ビジネスのスピードは速くなっている」。

ASEANシフトと標準化の要請

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一方、品質が高く、最先端の技術力を有する日本のものづくりはアジアでも健在だ。米中貿易戦争などの影響を受け、製造業が中国から生産拠点をシフトしているほか、消費市場としても成長する6億人の人口を抱える東南アジア諸国連合(ASEAN)に進出する日本企業は増えている。

「過去20年間は日本企業の進出は中国とタイがメインでしたが、近年はフィリピンやベトナムで新たに事業展開することが大きな流れとなっている」とステラさん。ミャンマーやインドなどからの問い合わせも増え、ASEAN全域で日系企業のビジネスの広がりが顕著となっているのだ。

B-EN-GシンガポールのManaging Director (現地法人社長)の山下元士は、「日本企業はASEAN各地にそれぞれ散発的に拠点を設けたケースが多く、内部システムもばらばら。これを標準化し、ASEAN全体を横串で見る機能を持ったシステムが求められるようになっている」と指摘する。山下は2009年から10年間、シンガポールに駐在し、日系企業のビジネス環境の変化を目の当たりにしてきた人物でもある。

ステラさんも「ASEAN各拠点の統一システムやデータ管理の標準化は最近のトレンドだ」と話す。むしろ海外拠点で先行してシステムを標準化して刷新し、後に日本にも導入していくケースも増えていると、山下は補足する。

原価計算がものづくりの原点

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「日系企業はASEANでも日本の製造プロセスをそのまま移行して、ものづくりの高い品質を守っている。こうした日系企業の製造業に欠かせないのが、生産管理と原価計算」とステラさん。大手外資系ベンダーなどのERPはこうした日本式の生産管理と原価計算に対応していないケースも多いが、mcframeは標準機能として備えている。NRIがB-EN-Gのパートナーとなったのも、これらの機能を標準としている唯一のERPということが大きかったと、経緯を説明する。

ステラさんはすでに、ベトナムなどの日系企業へのmcframe導入実績を持つ。「お客様から要望されたさまざまな要件が、このmcframeの標準機能で十分に対応できることを伝えると、『これならうちの会社でも使える。探していたのはこれです』と喜んでもらえることにやりがいを感じる」とステラさんは微笑む。

mcframeは生産管理や原価計算といった機能面で優れているだけではない。日本語や英語のみならず、ASEANの主要なローカル言語にも対応 (プロジェクト単位)している点も魅力だ。「mcframeは日本発の生産&原価管理システムであり、ASEANで展開する日系企業のエンドユーザーにとって、製造現場ならではの操作感や機能のシンプルさがある。また、標準的な管理機能だけではなく、日本式の緻密な原価管理にも幅広く対応するなど、機能対比におけるコストパフォーマンスも高い。iPadでも利用できて、本社からも現場の状況を把握できることもメリットだ」と話す。

mcframeが加速するグローバルビジネス

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ただ、もちろんASEANは多様で、ひとくくりにはできない。標準化したシステムに情報を落とし込むには言語という壁だけでなく、国や地域ごとに異なる法制度や慣習ルールなどの大きな差異も立ちはだかる。

導入作業にあたっては必ず各地の法令や税制度も勉強するというステラさん。「標準化するためには必ず現場で変更していかなければならないことがある。自分たちがやってきたプロセスをなぜ変えなければならないかを納得してもらうまで各現場で丁寧に説明することが重要な仕事のひとつ」と強調する。納得に至る成功ポイントは、「システムを導入することを決めた意思決定者と、現場で実際に使うエンドユーザーのスタッフたちの利益を一致させることだ」と強調する。相手によって中国語、英語、日本語を使い分けるだけではなく、現場や本社の想いを理解しているステラさんだからこそなせる業だ。

山下は「各企業でグローバル全体での標準化が始まり、その中でもASEAN各国の事業を統一的に進めていく動きが最近顕著だ。これは、ビジネス全体のスピードを高めることに繋がる。激化するグローバルビジネスを勝ち残っていくため、標準化は不可欠な時代になった」と締めくくった。
(取材協力:NNA)

※本インタビューは2019年1月現在の内容です。

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