事例

三井金属株式会社様

国内外80部門のマスタデータを統合し、AI活用を見据えたデータ基盤を構築

三井金属株式会社様

日本の非鉄金属業界を代表する1社である三井金属では、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)による支援のもとインフォマティカのSaaSプラットフォーム「Informatica Intelligent Data Management Cloud」に包含されている「MDM SaaS」を導入し、グループ全体のマスタデータ管理の運用を標準化・効率化した。刷新された基幹システム(SAP S/4HANA)へと不備のないデータを一気通貫で送出する仕組みを確立したことで、AI活用を見据えたデータ利活用の土台を築き、経営高度化に向けた環境整備を加速している。

導入前の課題

  • 経営情報基盤の確立に向け、全社横断でのマスタデータの品質・一貫性の担保が急務であった
  • マスタ管理のメンテナンス工数が膨大で、月末・期末に処理が滞っていた
  • 取引先の社名変更や合併などの最新情報がマスタへ適時に反映されない課題があった

導入製品・ソリューション

Informatica Intelligent Data Management Cloud(IDMC)-MDM SaaS

導入の効果

  • マスタデータの品質・一貫性が全社的に担保され、AI利活用の基盤整備に貢献
  • マスタメンテナンスの人手による作業を効率化し、データの利用開始までのリードタイムを大幅削減
  • 外部データベース連携によりデータ品質を維持するための工数を大幅に削減

導入のポイント

  • グループ80部門のマスタデータを「全社共通の資産」への一元化
  • 外部データベースとの自動連係により、取引先確認作業負荷を4割削減
  • 基幹システム「SAP S/4HANA」との連携に知見を持つB-EN-Gを採用

導入のきっかけ

DX普及期を支える「デジタル基盤」の確立が急務に

三井金属は一世紀以上の歴史をもつ企業ならではの高水準の生産性で、産業の基盤となる素材を提供する非鉄金属製錬事業と、電子材料・自動車部品・環境対応材料など幅広い分野で高付加価値製品を提供している機能材料の事業を中核としながら堅調な成長を続ける企業だ。グループ会社として神岡鉱業、彦島製錬、三井金属パーライト、三井金属ダイカスト、さらには情報子会社の三井金属ユアソフトなど、多数の企業を擁し、連結の従業員数は1万2,000余名に及ぶ。

同社では近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)に精力的に取り組んでいる。同社 ICT統括部 担当部長の山﨑氏は「当社では、統合思考経営を支える仕組みの一つとしてDXを推進しており、過去3年間で全社一様に進んだ『デジタル基盤整備』をベースに、これまで各部門/所社で進めてきた『デジタル技術活用』を全社で共有、定着させ、それを新たな価値創造につなげていく計画です」と説明する。

このデジタル基盤整備の挑戦の一つが、グループ全体に分散していたデータの統合だ。同社では、これまで国内外80部門が個別のルールでマスタデータを運用管理しており、全社横断でのデータ活用を阻む壁となっていた。

この状況を打破する契機となったのが、2019年に始動した基幹業務システムの刷新プロジェクトである。ICT統括部 主査の石井氏は、当時の狙いを次のように振り返る 。

「当社では2019年5月に基幹システムをSAP ECC 6.0からSAP S/4HANAへと刷新するプロジェクトを始動させました。それを契機に、グループ全体で国内外80部門が分散して運用管理してきた取引先マスタと勘定マスタを統合し、業務データの正確性や一貫性を担保しながら全社で活用できる仕組みを整えることになりました。それがMDMツール導入のきっかけです」

導入の経緯

マスタの統合管理と運用の効率化に向けてInformatica MDM SaaSを採用

同社では2019 年9月から11月にかけて、マスタ統合に向けたワーキンググループを立ち上げて統合方針を策定し、翌2020年にはマスタの一元管理を効率化するマスタデータ管理(MDM)ツールの調査も実施した。ただし、基幹システムの刷新に社内のリソースを集中させるべきとの判断から、MDMツールの導入はいったん見送られ、マスタ管理のワークフローのみを導入することにした。

石井氏は「ワークフロー導入の要点は、グループ全体のマスタ管理を担う組織を新たに発足させ、部門ごとに分散して行ってきたマスタ管理を一元管理へと移行させることです。体制のイメージは、部門単位での登録申請・承認フローを経たマスタデータについて、マスタ管理担当が品質をチェックして最終承認を行い、マスタへの登録を行うという形です。この新たなワークフローのもと、基幹システムの刷新プロジェクトが完了した2022年4月から、取引先マスタと勘定マスタの一元管理を始動させました」と説明する。

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三井金属株式会社
ICT統括部 主査 石井氏

ワークフローの導入によりマスタの一元管理は前進したものの、運用面では課題が残っていた。マスタメンテナンス時のデータ確認・登録にかかる業務負荷が大きく、特に月末や期末には処理が滞る傾向があったほか、取引先の社名変更なども手動申請に頼っていたため、情報の鮮度を保つことが困難だった。

こうした課題を根本から解決するため、同社はMDMツールの導入を決定。パートナーであるビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は、インフォマティカのクラウド型データ管理プラットフォーム「Informatica Intelligent Data Management Cloud」のMDM機能(以下、MDM SaaS)の導入に加え、マスタメンテナンスを効率化させるソリューションとして、法人データベースサービスの活用を提案した。

これらツールの採用理由について、ICT統括部の後藤氏は「当社がMDM基盤の構築で実現したかったことの1 つが、マスタメンテナンスのシステム化と効率化です。そのためにいくつかの製品を比較検討の土俵に上げましたが、多様なシステムをまたいだMDM基盤を柔軟に構築できる拡張性の高さを評価し、MDM SaaSを選定しました。また、法人データベースサービスを採用し、これまで国税庁ホームページとの照合など手作業で行っていた取引先マスタの確認業務をシステム化しました。これにより、会社情報を迅速かつ正確に取引先マスタへ反映できる体制を構築しています。」と明かす。

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三井金属株式会社
ICT統括部 後藤氏

さらに、MDM SaaS導入の協力会社としてB-EN-Gを選んだ理由について、「B-EN-GはInformatica製品の導入で豊富な実績を有しているうえに、当社が実現したいことへの理解が深く、提案内容は我々のニーズとの適合率が最も高いものでした。SaaS化されたMDM SaaSは独自のニーズを吸収するのがなかなか難しい製品です。その中で、我々が提示した要件をほぼすべて満たせると判断したのがB-EN-Gでした。それもB-EN-Gを選定した大きな理由です」と振り返る。

導入のプロセス

B-EN-Gによる支援のもとMDM基盤の構築を完遂

MDM SaaSの導入プロジェクトは2024年3月にスタートを切り、翌2025年7月に完了し、本番運用中である。プロジェクト推進チームは、三井金属のICT統括部と三井金属ユアソフト、B-EN-Gの担当者で組織され、同チームのもと、2024年3月から7月にかけて要件定義が行われた。

要件定義は2段階にわけて実施され、第1段階では、既存のワークフローや機能要件に基づいて検証用のシナリオが作成され、そのシナリオと実機を使ったフィット&ギャップ分析を通じて、データフローや機能配置などが決められた。第2段階では、第1段階の結果を踏ま えて、アドオン機能を含めたシステム機能の要件や非機能要件、テスト方針、移行方針、教育方針が定義された。のちには、システムの機能設計・開発・テストが順を追って進められ、2025年7月からの本番運用へと至っている。

今回のプロジェクトを実務面でリードした三井金属ユアソフト システムマネジメント部サブマネージャーの中西氏は、B-EN-Gの役割を次のように評価する。

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三井金属ユアソフト株式会社
システムマネジメント部
サブマネージャー 中西氏

「今回の構築で最も重要だったのは、申請ワークフローという『入口』から、MDMという『ハブ』、そしてSAP S/4HANAという『出口』までを、いかに不備なく連携させるかというインターフェースの仕組みでした。インフォマティカ製品とSAPの親和性については信頼していましたが、現行のワークフローと連動させ、不備があれば差し戻すといった複 雑なやり取りをシステム間で実現するのは容易ではありません。B-EN-Gにとってもこれまでに例の少ない構成の中で、この別システム同士を繋ぐという最も困難な部分を当初の想定通りに作り上げてくれました。運用開始後に見えてきた細かな改善検討は続いていますが、 この一気通貫の仕組みを実現できた点は非常に高く評価しています」

また、中西氏と同じく今回のプロジェクトに参加した三井金属ユアソフト システムマネジメント部サブマネージャーの林下氏は「クラウド版のMDM SaaSについては参考になる事例がほとんどない状況でした。その中で、B-EN-Gには我々の独自ルールに則ったシステムをしっかりと実装してもらって感謝しています」と評価する。同部の産形氏や横山氏からも、現業部門の複雑な要望を具現化する的確な提案が都度得られたことや、Informatica MDMへの開発経験に基づいた安心感のある構築が進められたことに対し、一様に 感謝の意が示された。

導入の効果と展望

取引先マスタ確認工数を4割削減、AI活用を見据えたデータ基盤を構築

MDM SaaSと法人データベースサービスを用いて構築されたMDM基盤は、運用開始からすぐに相応の効果をもたらしていると後藤氏は語る。

「例えば、マスタに登録する取引先名が正しいかどうかをチェックする作業が大幅に効率化され、1件当たりの確認工数が4割程度削減されています。また、最新の情報をもとにマスタの取引先名を一括変更し、マスタデータを常に最新の状態に保つプロセスも効率化されています。このように、MDM基盤の構築によってマスタデータの品質や一貫性を担保する下地が整備され、その意義は大きいと感じています」

この言葉を受けた形で、MDM基盤の今後について山崎氏は次のように展望している。

 「マスタデータの品質や一貫性が担保されたことは、データを利活用するための土台が確立され、ひいてはAI活用を見据えたデータ基盤の整備が進んだことを意味します。これからは、その環境を最大限に活用し、業務のさらなる効率化や経営の高度化を実現していきたいと考えています。それに向けて、B-EN-Gからの革新的な提案や技術の提供にも期待を寄せています。」

同社では今後、システムに蓄積されていくデータを有効に活用する一手としてAIの活用も視野に入れている。そうした革新技術の有効活用を図るためにも、同社はB-EN-Gの手厚いサポートに期待を寄せている。

同社にとって今回のMDM基盤構築は、単なるシステム導入ではない。2025年度から3ヶ年の中期経営計画で掲げる「デジタル普及期」におけるデータ活用の要(かなめ)であり、さらにその先の次期中期経営計画を見据えた「価値創造」へ向けた不可欠な素地づくりであ る。生成AIをはじめとする先端テクノロジーを真に使いこなし、経営の意思決定を高速化させるための「正しく、整ったデータ」という武器を手にし、次なる変革へと踏み出そうとしている。

事例企業紹介

社名 三井金属株式会社
Mitsui Kinzoku Company, Limited
設立 1950年5月1日
本社所在地 東京都品川区
事業内容 機能材料・電子材料の製造・販売、非鉄金属製錬、資源開発、貴金属リサイクル、素材関連事業、自動車部品の製造・販売、など
事業拠点 国内13ヵ所、北南米4か所、アジア10か所
企業Webサイト https://www.mitsui-kinzoku.com/

※記事内における組織名、役職、数値データなどは取材時のものです。閲覧される時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。