課題
- 国内企業が製品を輸出する際には、品名や統計品目番号(HSコード)の管理、場合によっては原産品判定番号の取得・管理といった輸出業務を行う必要がある。またこれらの情報をやりとりする相手は多岐にわたる。そのため貿易事務を行う企業の多くは、度々必要な情報の不足や誤解が発生し、その確認作業に多くの工数が割かれるという悩みを抱えている。さらに取扱品目や相手国が多様であればあるほど、業務プロセスも多様化し、標準化が思うように進まず、業務が属人化しがちである。
豊田通商 グローバル部品・ロジスティクス本部では、主に自動車生産用部品の輸出を行っており、輸出業務に前述のような課題を抱えていた。
導入製品・ソリューション
取り組みの背景
DX推進の取り組みと新たな経済連携協定の発効を背景に、輸出業務の仕組み化を検討
グローバル部品・ロジスティクス本部 グローバル部品事業統括部は、豊田通商が展開するグローバル部品・ロジスティクス事業の領域において、主に自動車部品の輸出入事業の全体管理、およびDXやカーボンニュートラル(CN)推進を担当する。欧米やアジアなど輸出先、東京、大阪などの地域別に4営業部が編成され、約220名のスタッフが業務に従事している。
輸出業務の一つとして、輸出製品の品名や統計品目番号(HSコード)などの情報を管理する必要があり、特に輸出先が日本とEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)やFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)を締結している国であれば、製品の原産地が日本であることを証明する原産地証明書を取得し、それにひも付く原産品判定番号を管理する必要もある。
輸出先国から特恵関税の適用を受けて日本製品のコスト競争力を強化することは、重要な使命だが、一方で原産地証明書を取得するための業務プロセスは複雑で、協定ごとに必要な書類も異なる。
相対しなければならない関係者も多岐にわたり、さらに各種情報のやりとりはメールとExcelベースで行っていたので、担当者以外にはその業務の詳細や進捗状況も分からないという状態であった。業務効率は担当者の経験に大きく依存し、業務自体も属人化していた。そこで目指したのが“メールのキャッチボールとExcelのバケツリレー”からの脱却だった。
製品選択の理由
迅速な仕組み化を目指して、ノーコードツールによる開発を選択
メインターゲットにしたのは、EPA協定に関わる業務部分で、当初は迅速に仕組み化、すなわちシステム化を図るために、パッケージを利用することを考えていた。しかしパッケージを導入する際には検討規模が大きくなり、他部門との調整が発生して進みにくくなるのではないかという不安があり、自分たちでノーコードによる開発を進めることを考えた。エンドユーザー側のITリテラシーを高めていくことができれば、環境変化にも柔軟に対応することができ、DXの推進をさらに加速させていくことが可能だと考えた。
迅速な仕組み化を目指して、ノーコードツールによる開発を選択

「私たちのやりたいこと、実現したいことを伝えて、B-EN-Gにプロトタイプを作ってもらいました。要望や疑問を伝えて、それに対応するプロトタイプを作ってもらったのです。出来上がったプロトタイプを確認したところ、Business b-ridgeには私たちがイメージしていた通りの動作や機能が備わっていました。“こういうふうにできたらいいな”とイメージしていたものが、まさに形になって現れた感じです。」(グローバル部品事業統括部 戦略・企画グループ 課長補 三浦 麻美子氏)
導入効果
業務の見える化、標準化、情報の共有化、属人性の排除を実現
複雑な業務プロセス上で、多くの関係者とのやりとりをメールとExcelで行っていた。「必要な情報の不足や誤解が度々発生し、その際の確認作業にも多くの工数が割かれるという問題がありました。また業務の進捗状況は担当者以外には分からず、Excelを使った情報の管理も担当者によってフォーマットが異なるので、他の人が見てもすぐに理解することができませんでした」
「クラウドサービスのBusiness b-ridgeを利用したことで、全ての関係者とのやりとりを、一つのプラットフォーム上でできるようになりました。また業務プロセスを見える化できたことで、作業工程の漏れや抜けをいち早く発見することが可能になり、さらに貿易協定ごとに異なる必要書類を明確化し、一元管理できるようにもなりました。これは属人性の排除と業務の効率化に大きく貢献しています。今後自由貿易のさらなる拡大が予想される環境下で、今回作り上げたEPAシステムは、輸出業務を強力に支えてくれる仕組みだと考えています。」(三浦氏)
今後の展望
ノーコード開発の知見を他の業務にも順次適用

「今回は初めての取り組みということもあり、基本的にはB-EN-Gにベースとなるシステムを構築してもらい、それを使ってみて新たな要件の追加や手直しを依頼するという形で進めました。その後、完成したEPAシステムを紐解き、どんな作りになっているのか、各モジュールがどのように連携しているのか、などを学んでいきました。現在までにBusiness b-ridgeを活用して、他の業務システムもいくつか開発しました。ただし、開発した仕組みをお客様にも使っていただこうとすると、一気にハードルが上がります。社外への展開をどのように図っていくかは、今後の課題ですね。」(グローバル部品事業統括部戦略・企画グループ グループリーダー 山田いづみ氏)
「今回Business b-ridgeで作ったEPAシステムを山田に解きほぐしてもらい、設定の仕方などを教えてもらったことで、自分である程度作ることができるぐらいのところまでは来たと思います。ユーザー企業側のリソース次第になるとは思いますが、社内にITに興味を持つメンバーがいるなら、ノーコード開発はよりスムーズに拡げていくことができると思います。」(三浦氏)

「今回ノーコード開発を採用して、自分たちで仕組みを改修・進化させていくことを選択しました。しかし専門的なスキルが必要な場合や、時間に制約がある短期的なプロジェクトの場合、さらには最新の技術トレンドを取り入れたい場合などには、信頼のおけるITベンダーの協力が必要不可欠です。B-EN-Gにはそうした立場で、今後も私たちを強力に支援してもらいたいと思います。」(グローバル部品事業統括部 部長 田部 光一朗氏)
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