プロフェッショナルに聞く

「現地に寄り添うコミュニケーション」の体現で複数拠点にまたがるグローバル展開プロジェクトを主導

2023.03.16

話者:ビジネスエンジニアリング株式会社
プロダクト事業本部
プロダクトサービス本部
システムインテグレーション3部
プロジェクトマネージャー/導入コンサルタント
茅 昌鋒

現地に寄り添うコミュニケーションの重要性

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海外展開を図る企業の多くが直面するのが、グローバル経営を支えるIT基盤構築に関する課題である。国や地域ごとに商習慣や会計ルール、税制などが異なるため、統一されたシステムを導入・運用することが困難なのだ。日本側の都合のみでシステムを押しつければ、現地スタッフからの反発も招きかねない。常に相手の立場を尊重し、一緒になって課題を解決していくことは大切である。とくにシステム導入では、期間や予算、リソース・運用しやすさなど、テクニカルな面だけでなく多面的な課題を分類し、優先度と解決手段の合意形成を図りながら、柔軟な調整を図っていく
ことが重要となる。

そうしたなか、茅昌鋒は「現地に寄り添うコミュニケーション」を徹底し、数多くのグローバル展開プロジェクトをリードしてきた。

大切なのは現地の立場に立ったコミュニケーション

日本で製造した製品を輸出することから始まった日系企業の海外進出は、現在、海外で製造して海外で販売する地産地消のビジネスモデルにチャレンジする段階に入っている。そのためには多様なビジネスモデルに対応する必要性から、多くの企業がさまざまな課題に直面している。なかでも大きな壁と言えるのが、グローバル経営を支えるIT基盤の構築である。各国・各地域に設立した現地法人に対してシステムを導入し、本社側との間で事業実績や会計などの経営情報をやりとりし、迅速な意思決定を図ろうとするものの、そこにさまざまな“衝突”が生じる。 

なぜなら各国・各地域にはそれぞれ独自のカルチャーがあり、商習慣が違えば会計ルールや税制なども大きく異なるからだ。現地固有の考え方や業務プロセスに合わせて設計されたパッケージソフト、あるいはスクラッチ開発されたシステムが国や地域ごとに使われていることもよくある。

そうした状況で日本式のやり方や日本で一般的に使われているシステムを“当たり前”として適用しようとしても、現地での反発を招くだけである。現地スタッフの視点ではジョブホップすることは当たり前であり、他社で通用しない日本式の仕組みは疎まれやすく、優秀な人材の留保が困難になってしまう。結果的に日本人駐在員の比率を下げられず、コスト高な経営により現地企業との競争力が発揮できない。

そうならないためには何をしなければならないのか。「まずは相手方の懐に飛び込んで語り合い、現地の立場になって考え方や思いを理解していくことから始める必要があります」と語るのは、プロダクト事業本部 プロダクトサービス本部 システムインテグレーション3部の茅昌鋒(もう・しょうほう)だ。
「現地に寄り添うコミュニケーション」を自らのポリシーとして体現し、「mcframe GA」のグローバル展開を牽引している人物である。

世界中を飛び回って活躍できる場を求めて

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中国の上海で生まれ育った茅が来日したのは2001年のこと。その後、日本の大学(経済学部)で4年間学び、そのまま就職活動も日本で行った。そうした中で出会ったのが、留学生向けのリクルーティングに積極的に取り組んでいたB-EN-Gだった。
「日系企業との間で水産物の貿易ビジネスを行っていた父親の影響もあって、私自身もグローバル志向がもともと強く、得意とする語学力(中国語、英語、日本語)を生かしながら、世界中を飛び回って活躍できる会社を探していました。もう1つ強い関心を持っていたのがITで、
企業や社会にイノベーションを起こしていく仕事に携わりたいと考えていました。そんな経緯からB-EN-Gの面接を受けたところ、私の志向に最も合っていたことに加え、社内の雰囲気も非常にフレンドリーに感じられ、キャリアを磨くならここだと就職を決めました」と茅は振り返る。


こうして新卒でB-EN-Gに入社した茅は、2年目の2008年に現在の部署(旧A.S.I.A事業部)に異動。mcframe GA導入におけるコンサルタント、そしてプロジェクトマネージャーとしての道を歩み始めたのである。
最初に携わったのは、香港に進出した商社の導入プロジェクトだ。「比較的小規模なプロジェクトであり、加えて香港ということから、中国語や英語で直にコミュニケーションをとれる優位性もありました。何度も現地に通い話し合いを重ねる中で、システムに対する理解を深めていただき、最終的には『自分たちの業務もとても楽になる』という現地スタッフからの高い支持を得るなど、無事にプロジェクトを成功に導くことができました」(茅)

東南アジア4カ国5拠点にまたがるプロジェクトを主導

茅の活動は以降、中華圏だけに限らず、東南アジアを中心に多国間の複数拠点にまたがるプロジェクトへと広がっていった。
ある大手設備工事会社の案件として対応したのは、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムの4カ国5拠点にmcframe GAを導入し、拠点ごとや工事案件ごとの実績値をグローバルで可視化するプロジェクトだ。

同社が東南アジア各国で手がけている工事は年間200件を超える多さで、しかも分野は多岐にわたる。ところが、各拠点はそれぞれの国ごとの会計ルールや税制に個別最適化された経理システムを導入していたため、勘定項目や書式もバラバラで、工事ごとの採算性を把握するのが容易ではなかった。各拠点の実績値をExcelシートでシンガポール拠点に集め、手作業で集計するといった煩雑な業務を強いられていた。そこで各拠点の経理システムを多言語に対応したmcframe GAに統一することで、課題の解決を目指したのである。

ただし、前述したとおり、本社からの一方的な“押しつけ”で物事を進めたのでは、各拠点からの反発を招くばかりだ。
「お客さまの業務を理解することは当然ですが、それ以前に相手の言葉でそれぞれの国の文化や考え方を考慮することが大切です。このプロジェクトでも多様な国籍・人種のメンバーが関わっており、英語を基本としつつ、場合によっては中国語も交えてコミュニケーションをとることで、相互の理解を深めました。また単に言葉を通訳するのではなく、お客さまの立場になって、お客さまの気持ちに寄り添うことを心がけました」と茅はいう。

その結果として、カスタマイズやアドオンをほとんど行うことなく、mcframe GAの基本機能の範囲内で各拠点が標準レポートを容易に加工できる仕組みを提供するなど、短期間でのプロジェクト完遂に貢献したのである。

中国拠点の要望を考慮したキメ細かな対応も

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大手の自動車用樹脂加工メーカーの案件で対応したのは、海外5カ国10拠点へmcframe GAを導入するという、さらに大規模なプロジェクトだ。各拠点の工数削減による決算の早期化、グローバル全体のガバナンス強化、リスクマネジメント強化、与信管理の強化、工場向け/部門別の予算実績管理機能の構築、EDI連携機能の構築など、課題も多岐にわたっており難易度は非常に高い。
このプロジェクトにおいても、茅は「現地に寄り添うコミュニケーション」を徹底することで、次のような課題解決を主導したのである。

まず決算の早期化やグローバル全体のガバナンス強化、リスクマネジメント強化については、mcframe GAをクラウド化することで本社側からのデータ可視化を実現。加えて「異なる国や地域で同一システムの定着化を図り、拠点間における駐在員のスムーズな異動といった貢献も果たしました」(茅)

与信管理については、mcframe GAの標準機能(警告アラート・限度額設定)を利用することで、従来のExcel管理からの大幅な効率化を実現した。「ただし、中国拠点における保証つき手形や債権保証額控除などの独特の会計制度には対応できないため、現地の要望を考慮した上で本番稼働後に別途アドオン帳票を提供することにしました」(茅)

予算実績管理機能についても、予算の種類そのものが原予算、修正予算、見込予算、落着予算など多岐にわたるとともに、各拠点は従来から使ってきたレポートのフォーマットに強いこだわりを持っていることが明らかになった。そこで、こちらについてもアドオンプログラムを開発して対応することとした。そしてEDI連携機能については、商社への発注点数が多く、品番体系もそれぞれの拠点で異なるため、mcframe GAの連携インポート機能を活用しつつEDIアドオンを開発。「これをお客さまの標準テンプレートとして他のグローバル拠点にも導入を進めたことで、受注伝票入力工数の削減、入力ミスの防止、受注側拠点の在庫コントロール、売上予測精度向上などに貢献しています」(茅)

リモートでも円滑にプロジェクトを遂行へ

インテリア・家具・家電を主力商品とする大手通販会社の案件においても、茅は日本本社および中国4拠点へのmcframe GAの導入に対応した。海外事業が急速に拡大する中で現地法人に対する統制を強化するとともに、新たな海外拠点の立ち上げを早期化することを目指したプロジェクトだ。

タイトなスケジュールを最優先してmcframe GAをクラウド上に構築し、詳細な機能拡張や改善は、システム稼働後に相談しながら調整を図ることとした。ところが、このキックオフ直後に起こったのが新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の発出である。海外渡航はもとより国内移動も制限され、それまでのように対面ではプロジェクトを推進できなくなった。

リモートでのシステム導入を余儀なくされた茅だったが、「やってみれば、意外と利点も多いことを発見しました」という。例えば出張が不要なため、顧客との打合せ日程を調整しやすく、Web会議やチャットツールを使って顧客側での作業進捗状況の把握も容易になり、プロジェクトを円滑に進めることが可能となった。打合せやトレーニングを録画しておけば、オンタイムで参加できなかったメンバーへの共有にも役立つ。こうしたクラウドを活用した双方向コミュニケーションのメリットを最大限に生かすことで、茅は予定どおりのスケジュールでプロジェクトを成功にこぎ着けた。

もちろん、本番稼働後の機能拡張にも問題なく対応している。「お客さまの本社サイドから『現預金科目変動時の相手科目を見たい』という相談を受け、会計仕訳の入力方法を貸借1対1とするやや特殊な運用へ変更することになりました。中国ではあまり馴染みのない仕訳入力方法となるため、丁寧なコミュニケーションを重ねて導入目的を伝え、現地側からの抵抗を抑えることで、新しい運用を軌道に乗せることができました」と茅は語る。

こうした茅の柔軟な対応力は顧客からも高く評価されており、「茅さんが担当だったことで、細かい仕様や操作方法などを中国語で相談できて助かりました。コロナ禍で現地に行けず、担当者向けのトレーニングなど不安もありましたが、リモートでも思った以上に順調に対応できました」という声が寄せられている。システムはあくまでも1つのツールに過ぎず、それを使って顧客にどんなメリットをもたらすのか、顧客の業務改革にどう貢献するのかを常に意識しながらプロジェクトを遂行することは大切である。対面はもとよりリモートにおいても「現地に寄り添うコミュニケーション」を信条として、茅はこれからも業務に邁進していく。

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